2022年啓蟄の酒丸。

 

 三月上旬の啓蟄も過ぎ、

ウチの庭にもたくさんの昆虫達が出てくる様になりました。

正に啓蟄。

酒丸です。

庭の桜は満開。

たくさんのミツバチが来ています。

 

 そして今日は311。

11年前の今日の私は…

大阪から名古屋に向かう新幹線の中。

座席についてひと安心したのも束の間、

全く新幹線が発車する気配が無く…。

車内アナウンスで

「関東以北で地震が発生した模様。運転を見合わせます。」

と流れました。

その後、ちょっと進んでは止まりちょっと進んでは止まり、

を繰り返し…

名古屋に着いたのは20時くらい。

新幹線の中の乗客全員が、

何が何やら分からずに社外に放り出された事を今でも覚えています。

これからも毎年思い出して、

せめて心を寄せていきたいと思っています。

 

 

 さて。

今回の私のブログは…

2020年12月のブログで「またいつか書きたいと思います」と言った、

ウエスタン文化についての続きを。

 

ちなみにその時のブログはこちら

「2020師走の酒丸。」

 

まぁこの時にも書いてはいるんですが…

ウエスタン文化とは、

「アメリカ人の根底に流れている思想みたいなモノ」

だと感じています。

 

1929年に起こった世界大恐慌で、

アメリカ経済は大混乱に陥りました。

特に疲弊が厳しかったのは、南部や西部。

いわゆる農業地域です。

アメリカの農業地域は日本とは面積が桁違いで…

東京ドーム100個分とか1000個分とか、ザラにあります。

そういった場所で作られているのは小麦やとうもろこしなどの穀物類。

今でいう「先物取引」の品種になる物です。

(この事についても、いつかブログで書いてみたいんだけどまた今度)

そしてまた、牛や馬、羊などの牧場も数多くありました。

 

そう言った牧場経営者は、

恐慌によって消費が落ち込み肉や牛乳が売れなくなって、

廃業せざるを得ないところが数多く出てきました。

そこで起死回生の一手として

「DUDE RUNCH(デュード・ランチ=観光牧場)」

という作戦に打って出ました。

 

そしてそのデュードランチを経営するにあたり、

上手に女性客を取り込む必要があったのです。

東部のお金持ちを常客とするには、

家族ぐるみで遊びに来てもらうのがポイント。

 

そこで起用されたのが、彼女でした。

ハリウッドが産んだ健康的なセックスシンボル、

マリリン・モンロー!

彼女をモデルに起用したのは戦後のリーバイス社で、

501の女性版として701という品番を発表。

リーバイス社としては、

「ワークウエア」から「カジュアルウエア」へと、

大きく方向転換するのには、

このデュードランチの流行がうってつけだったのです。

そしてその為には、当時の若手トップ女優だったモンローが、

正に適役だったのです。

 

更にリーバイスは、

701以外にも「よりウエスタンらしさ」を表現できるブランドとして…

ロングホーンやショートホーンシリーズを販売していく事になります。

 

それらはデザイン的にもっとウエスタナイズされていきました。

例えばこれ。

リーバイスショートホーン カリフォルニア・ランチ・パンツ。

ベルトループの形状や、L字型ポケット部分のパールハッチが印象的。

デニムは敢えて8オンス程度の薄手なモノを用いて、

活動的なイメージにしています。

サイドジッパーのものがレディース、

フロントジッパーのものがメンズでした。

 

このメンズのデニムが、本当に現存数が少ない。

私も1本持っていたんですが、引っ越しのどさくさで紛失中…。

 

が、ピケ素材のデッドストックは引っ越し荷物から見つかったので、

今回はそれをクローズアップ。

 

L字型ポケットや太くて剣先が尖ったベルトループが印象的。

 

まだ紙のネームが残る、マイサイズ。

 

内側のブランドネームは燦然と輝くショートホーンネーム。

「オーセンティック・ウエスタン・ウエア」の表記に意気込みを感じます。

 

フロントジッパーなのでちゃんとメンズ。

ジッパーはスコービルのグリッパージッパー、3番の大きさ。

ベルト部分は隠しパールハッチです。

 

 今でもこれを仕入れた店を覚えています。

L.A.から車で2時間くらい101ハイウエイを北上したベンチュラの手前、

オックスナードという小さな街。

オールドタウン内の寂れたワークウエアショップでした。

小さな体育館くらいの広さがある店でしたが、いつもは閉まっていて…

たまたま前を通った時にシャッターが空いていたので飛び込んだのです。

1920年代の真鍮製レジスターの前にお婆ちゃんが座って作業してました。

「もうお爺さんが病院に入っちゃったから、店は閉めるつもりなの。

でもちょっとした忘れ物があって取りにきたら…あなたが来たのよ。

これも何かのご縁。なんでも安くするから買って帰ってね~」

店内は、1960年代以降ほとんど手付かずのままでした。

ただ、数年前にもやっぱり私みたいな日本人が来たそうで…

その時、店内の「良いサイズのリーバイス」は、

ほとんど売れちゃったらしい。

それでも店内は「宝の山」

このショートホーンを筆頭に、

サイズが大きい66やジージャンの70505、

カロリナのワークブーツなどを段ボールで5箱分くらい買ったのです。

お婆ちゃんも喜んでくれて、

レジの脇にあったキャラメルを私に差し出してくれました。

何時間も埃まみれになってデッドストックを運び出してくたくた、

甘いキャラメルは嬉しかった!

ところが。

私はその時、前歯が仮の差し歯で、

次に日本に戻ったら本差し歯にする予定でした。

その仮の差し歯にキャラメルが引っ付いてポロッと取れてしまい…

お婆ちゃんが私の顔を見て「ぎゃー!」と驚きましたwww

キャラメル付き差し歯がレジの下から見つかってよかった。

そうしたらお婆ちゃんが

「店の奥の角にレストルームがあって、

中に鏡がついているからそこではめてくればいいわよ」

と言ってくれました。

 

体育館くらいの広さの中の薄暗い店内を、

一番遠い奥の角まで行ってレストルームの扉を開けました。

そこは真っ暗で…

手探りで灯りのスイッチを探してパチンと点けました。

 

すると、真っ黒な商品が詰め込まれた木枠の棚が。

 

そう、リーバイスXXがデッドストックでゴロゴロ眠っていたのです。

 

この話は、弊社出版の雑誌「バンドワゴン」の中の、

「ミクロコスモス」という連載で書きました。

続きはそちらでお楽しみを。

 

 

 

 閑話休題。

このリーバイスショートホーンを叩き台に、

ドライボーンズで作ったのがこちら!

デニム ランチ・パンツ!

 

実にランチパンツらしい、ベルトループとポケットフラップ。

 

ベルト部分の隠しパールハッチと、フロントジッパー。

ドライボーンズとしては珍しくジップフライ。

 

L字型ポケットにはパールハッチ、しかも菱形(更にカーヴ付き)!!!

 

ウエスタンブーツは勿論の事、

ドライボーンズのウエスタンモックスなどがバッチリ似合います!

 

 

このデュードランチ文化は、

1950年代にアパレル部門で昇華していきます。

既製品ではなく、

オーダーでウエスタンファッションを作るブランドが次々に登場。

ヌーディーズやベイリーズ…

エキゾティックなウエスタン文化が花開きます。

そしてその文化は、

1955年のエルヴィス・プレスリーの登場と共に、

ティーンエイジファッションと結び付き、

ロックンロールファッションとなっていくのです!

 

ここでその前夜祭とも言える、

ロックンロールなウエスタンファッションのスーパーヴィンテージをお披露目!

 

コットンブラックツイルの、ランチパンツ!

ベルトループやL字型ポケットの飾りは、なんとホワイトレザー!

 

ポケット飾りのアップ。

なんとポケットに使われているボタンは二つ穴の、

通称「豚鼻ボタン」。

そう、カーメルのナッソージャケットに使われるボタンと同じです!

 

燦然と輝く「ベイリーズ」のブランドネーム。

変態的なフィフティーズラヴァーは、

このネームだけでご飯3杯食えますwww

 

 

 庭の桜が満開になったので…

夫婦でささやかな花見を開催。

球体で3本足の実にフィフティーズっぽいBBQグリルで、

ステーキやソーセージを焼いてビールやワインを。

これぞアウトドアでキャンピングな、デュードランチの延長。

つまり、これこそがフィフティーズ・カルチャーなのです。

ここに辿り着くまでが、長い(意味がわかる人にしか分からない)